- 1scene 投稿者:v_v 投稿日:2008年07月25日(金)11時47分12秒
- 短いお話を書いていこうかなと思っております。
宜しくお願いします!
- 2投稿者:v_v 投稿日:2008年07月27日(日)23時57分20秒
- 鉛色の空は重く、雨が音を立てて地面に落ちる。見ているだけで気が沈んだ。
ふと、青白い稲妻が走った。
何回も何回も雲を渡り、存在を確かめさせるのに鳴き声を上げない。
それが気味悪く、少しでも動いたら自分の頭に鋭い光が落ちてきそうな気がしてその場から動けないでいる。
傘がないというのも、動けない原因のうちに入るのだが。
「はい、もしもし?」
「……うん」
耳に押し当てた携帯電話から覇気のない声が聞こえる。
また、暗い空には似つかわしくない明るい稲妻が走る。
「うん、じゃなくて」
「うん。いや、何となくね」
「…ああ、そう」
すぐに途切れた二つの声の間を、静かな時が流れる。
会話が弾まないのはいつもの事だ。
- 3投稿者:v_v 投稿日:2008年08月01日(金)19時57分16秒
- それでも彼が「じゃあね」と電話を切らず、
そのまま付き合ってくれる事を私は知っている。
「…あ」
「何?」
空を支配するかのように、稲妻が枝分かれして雲の中を走り抜けた。
青白い、はっきりとした光に、魅了される。
「綺麗だ」
「何が」
「雷」
「ああ」
そのままぽかんと口を開けて空を眺めていたら、
電話越しに「雷か」と呟く声が聞こえた。
「迎えに行ってあげようか」
「え?」
「雷、ずっと見てるつもり?」
- 4投稿者:v_v 投稿日:2008年08月01日(金)19時59分21秒
- 小さく笑みを含んだ声に何も言えず、人差し指で頬をかいた。
「…駅前にいるから。傘も持ってきて」
「わかってるよ」
今行くから、と言ったあとも、電話は切れずに繋がったまま。
何を話すわけではないのに、消そうとは思わない。
だんだん雷が遠ざかる。
青白い光が弱々しくなって、代わりに遠くからオレンジ色の陽光が空を照らす。
すると空にぼんやりと七色の曲線が描かれる。
あ、と呟いたのは私じゃなくて彼だった。
「綺麗だ」
彼の言葉に私は無言で頷いた。
気付いた?そこからも見える?彼が私に問いかける。
- 5投稿者:v_v 投稿日:2008年08月01日(金)20時01分32秒
- 思わず口元が緩んだ。「うん、見えるよ」虹を見つめたままもう一度頷く。
「綺麗だ」
三つの声が重なった。
私の声と携帯電話を通した彼の声と携帯電話を通さないで聞こえた彼の声。
「帰ろう」
目の前でにこりと笑った彼は、ピンク色の傘を差し出した。
私はそれを受け取って、そこで漸く電話を切った。
「雷行っちゃったね。俺も稲妻見たかった」彼が遠くの空を見つめる。
少し残念そうだった声に「行ってくれて良かった」と、慰めともつかない言葉をかけた。
携帯電話をポケットにしまい、空いた手をぶらぶらとさせていると、温かなものが触れた。
- 6投稿者:v_v 投稿日:2008年08月01日(金)20時03分10秒
- 「まあ、虹見れたから良いか」
優しい力で握られ、私もそれに応える。
共有する体温。二人の目に映る虹。肩を並べて歩く道。
揺れる二つの傘の下で繋がった手は、家に着くまで離れることはなかった。